
生前対策は何から始める?60代からの相続準備チェックリスト|奈良の女性税理士
生前対策は何から始める?60代からの相続準備チェックリスト|奈良の女性税理士
「生前対策という言葉はよく聞くけれど、具体的に何をすればよいのかわからない」「うちは相続税がかかるほどではない気がするが、何も準備しなくてよいのか不安」。奈良県内のご相談でも、こうしたお悩みをよく伺います。秋のお彼岸などでご家族が集まる時期は、相続の話が自然と出やすく、生前対策を始める良いきっかけになります。
生前対策は、高額な節税テクニックのことではありません。残されるご家族が迷わず、争わず、納税で慌てないように、元気なうちに準備しておくことの総称です。この記事では、60代から始める生前対策の全体像を、チェックリスト形式で奈良の横山千夏税理士事務所が解説します。
生前対策の3つの柱
生前対策は、大きく次の3つに整理できます。
| 柱 | 目的 | 代表的な手段 |
|---|---|---|
| 分け方を決める | 遺産分割で家族が揉めないようにする | 遺言書、財産目録、家族での話し合い |
| 渡し方を工夫する | 生きているうちに計画的に財産を移す | 暦年贈与、各種の贈与特例 |
| 税金に備える | 相続税の見込みを把握し、納税資金を用意する | 相続税の試算、生命保険の活用、特例の要件確認 |
3つの柱はつながっています。たとえば、遺言書で分け方を決めるには財産の全体像が要りますし、贈与で渡してよい金額は相続税の試算がないと判断できません。だからこそ、始める順番が大切になります。
ステップ1|財産目録を作り、相続税がかかるかを知る
最初の一歩は、財産の棚卸しです。預貯金・不動産・有価証券・生命保険・借入金を一覧にした財産目録を作りましょう。通帳や保険証券の保管場所を書き添えておくだけでも、ご家族の負担は大きく減ります。
次に、相続税がかかりそうかを確認します。2026年現在、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、遺産の総額がこの範囲に収まれば、原則として相続税はかからず申告も不要とされています。たとえば相続人が配偶者と子2人の計3人なら、基礎控除は4,800万円です。
奈良県内でも、ご自宅の土地の評価額が想像より高く、基礎控除を超えていたというケースは珍しくありません。土地の評価や特例の適用可否も含めて、一度概算を出しておくと、その後の対策の要否がはっきりします。
ステップ2|「分け方」を形にする:遺言書の準備
財産の全体像が見えたら、誰に何を渡すかを考え、遺言書として形にします。遺言書には主に2つの方式があります。
- 公正証書遺言:公証人が作成に関与する方式。形式の不備で無効になりにくく、原本が公証役場に保管されます。費用や作り方は「公正証書遺言の費用はいくら?」の記事で詳しく解説しています
- 自筆証書遺言:ご自身で全文を書く方式。2026年現在、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すると、1件3,900円の手数料で遺言書を保管してもらえ、紛失や改ざんの心配を減らせるとされています
遺言書が特に重要なのは、子どもがいないご夫婦、相続人どうしの関係が疎遠な場合、自宅以外に分けやすい財産が少ない場合などです。当てはまる方は、生前対策の中でも遺言書を優先することをおすすめします。
ステップ3|「渡し方」と「税金」の対策を組み合わせる
分け方の方針が固まったら、試算の結果に応じて、渡し方と納税の準備を組み合わせていきます。
60代からの生前対策チェックリスト
- 財産目録を作成した(保管場所のメモを含む)
- 相続税の概算を把握した(基礎控除との比較)
- 遺言書の方式を決め、作成に着手した
- 暦年贈与など、生前に渡す計画を検討した(「贈与税の基礎控除110万円は「2つ」ある?」の記事参照)
- 生命保険の非課税枠(2026年現在、500万円×法定相続人の数)を確認した(「生命保険に相続税はかかる?」の記事参照)
- 自宅の土地に小規模宅地等の特例が使えそうか、要件を確認した(「小規模宅地等の特例とは」の記事参照)
- 納税資金の見通しを立てた(預貯金・保険・不動産売却の要否)
- 認知症に備え、財産管理の方法(任意後見・家族信託など)を家族と話し合った
- 保険・口座・インターネット上のサービスの一覧と連絡先をまとめた
すべてを一度に行う必要はありません。1と2で現在地を知り、3で分け方を固め、4以降を順に検討していく流れが、遠回りに見えて確実です。また、4の贈与や6の特例は、適用の要件や期限が税制改正で見直されることがあります。着手する年ごとに、国税庁の最新情報や専門家への確認を挟みながら進めると安心です。
納税資金の準備も忘れずに
相続税の試算で納税が見込まれる場合は、納税資金の準備までが生前対策です。相続税は原則として、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、現金で一括納付するとされています。奈良県内のご相談では、財産の大半がご自宅や田畑などの不動産で、預貯金が少ないために納税資金に苦労されるケースが目立ちます。生命保険は受取人を指定でき、非課税枠もあるため、納税資金の準備手段としてよく活用されています。不動産の一部売却を視野に入れる場合も、生前に方針を決めておくことで、ご家族が期限に追われて不利な条件で手放す事態を避けやすくなります。
認知症への備えも「生前対策」のうち
見落とされがちですが、判断能力が低下すると、贈与や遺言書の作成、不動産の売却といった対策そのものができなくなるとされています。生前対策に取り組めるのは、心身ともに元気なうちだけです。「まだ早い」と感じる60代こそ、実は最も選択肢が多い時期といえます。
よくある質問
Q. 生前対策は何歳から始めるのがよいですか?
A. 決まりはありませんが、退職や年金生活への移行で財産の全体像が見えやすくなる60代は、始める時期として適しています。判断能力が低下すると取れる手段が大きく減るため、早いほど選択肢は広がります。
Q. 相続税がかからない見込みでも、生前対策は必要ですか?
A. 相続税がかからないご家庭でも、遺産分割をめぐる行き違いは起こり得ます。財産目録と遺言書という「分け方」の準備は、税額にかかわらず役に立ちます。
Q. 家族にはいつ、どこまで話しておくべきですか?
A. 財産の細かな金額まで開示する必要はありませんが、遺言書の有無や保管場所、財産目録の在りかは共有しておくと安心です。ご家族が集まる機会に少しずつ話すことをおすすめします。
Q. 生前対策は税理士に相談すべきですか?それとも司法書士や弁護士ですか?
A. 相続税の試算や贈与の設計は税理士、不動産の名義や登記は司法書士、紛争性のあるご事情は弁護士と、内容によって適した専門家が異なります。当事務所では税務を軸に、案件の内容に応じて他の専門家との連携もご案内しています。
Q. 何から相談すればよいかも決まっていないのですが、大丈夫ですか?
A. 問題ありません。財産の状況とご家族の構成を伺い、優先順位を一緒に整理するところからお手伝いします。チェックリストの1と2にあたる部分を最初にご一緒するイメージです。
まとめ|現在地を知ることが、生前対策の第一歩
生前対策は「分け方を決める」「渡し方を工夫する」「税金に備える」の3つの柱で考えると、進める順番が見えてきます。まずは財産目録と相続税の概算で現在地を知り、遺言書で分け方を固め、贈与や保険・特例の活用を組み合わせていきましょう。
横山千夏税理士事務所では、女性税理士・女性スタッフが中心となり、奈良県内やその近郊にお住まいの方の生前対策と相続税申告を承っています。Zoom等を利用したオンライン相談のほか、近鉄奈良駅からすぐの事務所での面談にも対応しています。初回面談(60分)は11,000円(税込)で承っておりますので、「何から始めればよいか」の整理から、お問い合わせフォームでお気軽にご相談ください。


