
相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットと年110万円基礎控除【2026年版】
相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットと年110万円基礎控除【2026年版】
「子や孫にまとまった財産を早めに渡したい」と生前贈与を検討するとき、有力な選択肢になるのが相続時精算課税制度です。2024年(令和6年)1月の税制改正で年110万円の基礎控除が新設され、以前より使いやすい制度になった一方、「一度選ぶと暦年課税に戻れない」など、知らずに選ぶと後悔しかねない注意点もあります。
奈良市・生駒市・橿原市など奈良県内でも、「実家の土地を子に渡しておきたい」「改正で何が変わったのか知りたい」というご相談が増えています。この記事では、私たち横山千夏税理士事務所が、2026年現在の制度内容に基づいて、相続時精算課税制度の仕組みとメリット・デメリットを、暦年課税との違いも含めてわかりやすく解説します。
相続時精算課税制度の基本|2026年現在の制度概要
相続時精算課税制度とは、贈与税の課税方法の一つで、累計2,500万円までの特別控除の範囲内であれば、贈与時に贈与税がかからない制度です。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。そして贈与した方(特定贈与者)が亡くなったときに、贈与財産を原則として贈与時の価額で相続財産に加算し、相続税として精算します。つまり「贈与税を相続税として後払いする」イメージの制度とされています。
対象者
2026年現在、原則として次の要件を満たす場合に選択できます(国税庁資料より)。
- 贈与者: 贈与の年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母
- 受贈者: 同日時点で18歳以上の、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫
2024年改正のポイント|年110万円の基礎控除が新設
2024年1月1日以後の贈与から、特別控除2,500万円とは別に、年110万円の基礎控除が新設されました。ポイントは次の3つです。
- 年110万円以下の贈与なら贈与税がかからず、申告も不要(改正前は少額でも毎年申告が必要でした)
- 基礎控除内の贈与は相続財産への加算も不要(2,500万円の特別控除枠も消費しません)
- 暦年課税の基礎控除110万円とは別枠(たとえば父からは精算課税、母からは暦年課税、という使い分けも可能とされています)
なお、相続時精算課税の基礎控除分は、後述する暦年課税の生前贈与加算の対象外とされている点も特徴です。
暦年課税とは?相続時精算課税制度との違い
比較の前提として、もう一つの課税方法である暦年課税についても押さえておきましょう。
暦年課税とは、贈与税の原則的な課税方法です。1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の合計額から年110万円の基礎控除を差し引いた額に贈与税がかかり、110万円以下であれば贈与税はかからず申告も不要です。この非課税枠は「贈与を受ける人ごとに毎年110万円まで」で、相続時精算課税制度を選ぶ届出をしなければ、贈与には自動的にこの暦年課税が適用されます。
一度相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。そのため、両制度の違いを理解したうえで選ぶことが大切です。主な違いは次のとおりです。
- 選択の要否: 暦年課税は届出不要で自動的に適用/精算課税は要件を満たす人が届出をして選択
- 基礎控除: どちらも年110万円だが、精算課税の110万円は2024年改正で新設された別枠
- 生前贈与加算: 暦年課税は2024年以降の贈与から、相続開始前の加算期間が3年から7年へ段階的に延長(完全適用は2031年から)。精算課税の基礎控除分は加算の対象外
この生前贈与加算の見直しにより、暦年課税は長い期間をかけてコツコツ贈与する場合に効果が出やすく、相続時精算課税は基礎控除を活かしつつまとまった財産も動かしたい場合に向く、という整理がされています(2026年現在)。
相続時精算課税制度のメリット・注意点
メリット
- まとまった財産(住宅取得資金、事業資金、不動産など)を、贈与時の税負担を抑えて早期に渡せる
- 贈与財産は贈与時の価額で相続税を計算するため、将来値上がりが見込まれる財産を先に渡すと相続税を抑えられる可能性がある
- 収益不動産を先に渡せば、贈与後の家賃収入は受贈者のものとなり、相続財産の増加を抑えられる
- 改正後は年110万円までの少額贈与を申告不要・加算不要で続けられる
注意点・落とし穴
- 一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻れません(撤回不可)
- 精算課税で贈与した土地には、相続時に評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例が使えません
- 基礎控除を超えた贈与分は相続時にすべて相続財産に加算されるため、相続税の節税につながるとは限りません
- 不動産を贈与で取得すると、相続で取得する場合と比べて不動産取得税・登録免許税の負担が重くなる傾向があります


