家族信託の税金はいつかかる?贈与税・相続税・損益通算の注意点【2026年】
家族信託の税金はいつかかる?贈与税・相続税・損益通算の注意点【2026年】
親の認知症に備えて財産の管理を家族に託せる仕組みとして、家族信託(民事信託)への関心が高まっています。奈良県内でも、奈良市や生駒市の賃貸アパート、郡部のご実家や農地について「親が元気なうちに管理を子へ託したい」というご相談が増えてきました。
一方で、家族信託を検討する際に多くの方が不安に感じるのが「税金はいつ、誰に、どれだけかかるのか」という点です。家族信託は名義が受託者(託される人)に移るため、一見すると贈与のように見えますが、課税の考え方はまったく異なります。
私たち横山千夏税理士事務所では、生前対策のご相談の中で家族信託の税務面のご質問を多くお受けしています。本記事では、家族信託にかかる税金をタイミング別に整理し、見落としやすい注意点を解説します。
家族信託の税金は「名義」ではなく「受益者」で考える
家族信託には3つの登場人物がいます。財産を託す委託者、管理を引き受ける受託者、財産から利益を受ける受益者です。たとえば「父が委託者、長女が受託者、利益は父が受け取る」という形が典型で、父の判断能力が低下しても長女が賃貸管理や修繕、売却などを続けられるため、財産の凍結を避ける備えとして使われています。
税金のうえで重要なのは、不動産の名義(登記)が受託者に移っても、課税は利益を受ける受益者を基準に行われるとされている点です(受益者等課税信託の原則。2026年現在)。一般的な家族信託は「委託者=受益者」の自益信託で組まれるため、信託を始めただけでは実質的な財産の移転がなく、贈与税はかからないとされています。
税金がかかるタイミングを時系列で整理
| タイミング | 主な税金 | ポイント |
|---|---|---|
| 信託開始時(委託者=受益者) | 贈与税なし | 実質的な移転がないため。不動産は信託登記の登録免許税がかかる |
| 信託開始時(委託者≠受益者) | 贈与税 | 対価なく利益を受ける受益者に課税される |
| 信託期間中 | 所得税・住民税、固定資産税 | 賃料などの収益は受益者の所得。固定資産税の納税通知は受託者宛てだが、実質は信託財産・受益者の負担とするのが一般的 |
| 受益者が亡くなったとき | 相続税 | 受益権などを引き継ぐ人に、相続財産とみなして課税される |
| 信託終了時 | 登録免許税、場合により不動産取得税 | 誰に財産が帰属するかで課税関係が変わる |
開始時:自益信託なら贈与税はかからない
委託者と受益者が同じであれば、信託開始時に贈与税は課されないとされています。ただし、不動産を信託する場合は信託登記が必要で、登録免許税(原則、固定資産税評価額の0.4%。土地の信託登記には軽減税率の特例が設けられてきました)がかかります。軽減の適用期限は税制改正で変わるため、実行時に最新の税率をご確認ください。なお、信託設定の段階では不動産取得税はかからないとされています。
期間中:収益は受益者の所得として確定申告
信託した賃貸不動産の家賃収入は、受益者の不動産所得として確定申告が必要です。確定申告の際には、信託から生じる所得について通常の内訳とは別に明細を添付する実務があるとされています。また、受託者には、信託財産を自分の財産と分けて管理する義務(信託口口座での管理など)や、信託の計算書類の作成、一定の場合に税務署へ信託の計算書を提出する義務があるとされており、管理を引き受けるお子様側の事務負担も考慮しておきましょう。
相続時:受益権はみなし相続財産
受益者が亡くなり、受益権や信託財産を引き継ぐ人がいる場合、その人に相続税が課されます。家族信託を組んでいても、相続税の課税を免れるわけではありません。
家族信託で見落としやすい3つの税務の落とし穴
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家族信託そのものに節税効果はない 信託をしても財産の評価額が下がるわけではなく、相続税の負担は原則として変わらないとされています。税負担を抑えたい場合は、暦年贈与や小規模宅地等の特例など、別の対策との組み合わせが前提になります。なお、信託財産になっている宅地でも、要件を満たせば小規模宅地等の特例は適用できるとされていますので、信託を組むこと自体で特例をあきらめる必要はありません。贈与の基本は贈与税の基礎控除110万円は「2つ」ある?相続時精算課税と暦年課税の違いをご覧ください。
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信託不動産の赤字は損益通算できない 租税特別措置法により、信託財産である不動産から生じた不動産所得の損失は、なかったものとみなされ、信託していない他の不動産の黒字などと損益通算できず、翌年への繰越もできないとされています(2026年現在)。大規模修繕を予定している賃貸物件を信託に入れると、修繕費の赤字を活かせない場合があるため、信託に入れる財産の範囲は税務面から慎重に選ぶ必要があります。
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契約設計しだいで思わぬ課税が生じる 受益者を途中で変更した場合や、信託終了時の帰属先の決め方によっては、贈与税・相続税の課税が生じるとされています。信託契約書は公正証書で作成することが一般的で、公証役場の費用感は公正証書遺言の費用と作り方の記事が参考になります。税務と法務の両面からの設計が欠かせません。
横山千夏税理士事務所のサポート
当事務所は、奈良の相続税申告と生前対策を専門とする税理士事務所です。家族信託については、信託に入れる財産の選び方による税負担のシミュレーション、受益者の確定申告や受託者の計算書類の実務、相続税申告までを女性税理士と女性スタッフがサポートし、信託契約書の作成は司法書士など専門職と連携してご案内いたします。
家族信託は万能ではなく、遺言や生前贈与との役割分担を整理してこそ効果を発揮します。生前対策全体の進め方は生前対策は何から始める?60代からの相続準備チェックリストもあわせてご覧ください。
ご相談はZoomなどを使ったオンライン相談を主体としており、離れて暮らすご家族にもそれぞれの場所から同席していただけます。来所の場合は近鉄奈良駅から徒歩圏の事務所でお待ちしております。初回面談(60分)は11,000円(税込)で承っております。
よくある質問(FAQ)
Q. 家族信託をすると相続税は安くなりますか?
A. 家族信託そのものに相続税を減らす効果はないとされています。財産の管理を続けるための仕組みと位置づけ、節税は暦年贈与や各種特例など別の対策で検討しましょう。
Q. 信託した不動産の家賃収入は誰が申告しますか?
A. 受益者の不動産所得として確定申告します。信託から生じる所得については、明細書の添付など通常と異なる実務があるため、税理士へご相談ください。
Q. 受託者になった子どもに税金はかかりますか?
A. 受託者は財産を管理する立場にすぎないため、受託者であること自体に贈与税や所得税は原則かからないとされています。課税は利益を受ける受益者を基準に判断します。
Q. 家族信託と暦年贈与は併用できますか?
A. 併用は可能とされています。信託の設計によっては受益権の一部を贈与する方法もありますが、課税関係が複雑になるため、実行前に税理士への確認をおすすめします。
まとめ|「いつ・誰に・何の税金か」を設計段階で確認する
家族信託は、認知症による財産凍結への備えとして有効な一方、課税は受益者基準で判断される、損益通算に制限がある、節税効果自体はない、といった税務の特徴があります。税制改正により取り扱いが変更される可能性もありますので、契約前に最新の情報をご確認ください。
「わが家の財産のうち、どこまで信託に入れるべきか」「税金面で損をしない設計にしたい」という方は、オンライン相談またはお問い合わせフォームから、横山千夏税理士事務所までお気軽にご相談ください。

