配偶者居住権で自宅に住み続ける|相続税評価と二次相続の節税効果【2026年】
配偶者居住権で自宅に住み続ける|相続税評価と二次相続の節税効果【2026年】
「夫が亡くなった後も、住み慣れた自宅でこのまま暮らしていけるのだろうか」——奈良市・生駒市・橿原市をはじめ、奈良県内のご相談で近年よくいただくお悩みです。遺産に占める自宅の割合が大きいご家庭では、配偶者が自宅を相続すると預貯金をほとんど受け取れず、老後の生活資金に不安が残るというケースが少なくありません。
こうした場面で検討したいのが、2020年4月に始まった配偶者居住権です。自宅を「住む権利」と「所有権」に分けることで、配偶者は自宅に住み続けながら生活資金も確保しやすくなり、さらに二次相続の税負担を抑える効果も期待できるとされています。
私たち横山千夏税理士事務所では、奈良で相続税申告と生前対策をサポートする中で、配偶者居住権を使うべきかどうかのご相談を多くお受けしています。本記事では、制度の仕組み・相続税評価・二次相続への効果と、利用前に知っておきたい注意点を解説します。
配偶者居住権とは?自宅を「住む権利」と「所有権」に分ける制度
配偶者居住権とは、亡くなった方の配偶者が、相続開始時に住んでいた自宅建物に原則として終身、無償で住み続けられる権利です。2018年の民法改正で創設され、2020年4月1日以降に発生した相続から利用できるようになりました(2026年現在)。
設定の方法は、遺産分割協議で決める、遺言で配偶者に遺贈する、死因贈与契約を結ぶ、家庭裁判所の審判による、のいずれかです。第三者に権利を主張するには、自宅建物への登記が必要とされています。
この制度を使うと、自宅を「配偶者居住権(住む権利)」と「負担付きの所有権」に分けられます。たとえば、配偶者は居住権と預貯金を、お子様は自宅の所有権を相続する、という分け方ができるため、「自宅か生活資金か」の二択で悩まずに済む点が大きな特徴です。
どんなご家庭で検討する価値があるか
- 遺産に占める自宅の割合が大きく、配偶者の生活資金も確保したいご家庭
- 自宅の所有権の行方を巡って相続人の間で意見が分かれそうなご家庭
- 二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)まで見据えて税負担を抑えたいご家庭
自宅の名義変更の流れや配偶者居住権の基本的な活用場面は、自宅や不動産の相続手続きと配偶者居住権の活用法(奈良編)でも解説しています。
配偶者居住権の相続税評価と二次相続の節税効果
評価のしくみ:建物と敷地を2つの権利に分けて評価する
相続税の計算では、自宅の建物・敷地を「配偶者居住権(建物)と敷地利用権」「負担付きの建物所有権と敷地所有権」に分けて評価します。評価額は、建物の残存耐用年数や配偶者の平均余命などをもとに、国税庁が定める方法で計算するとされています(2026年現在)。一般に、配偶者が若いほど居住権の評価額は大きく、所有権側の評価額は小さくなります。
なお、存続期間は終身が原則ですが、遺産分割協議や遺言で「10年間」のように期間を区切って定めることもでき、期間を短くするほど居住権の評価額は小さくなります。どのような設定がご家庭に合うかは、財産構成と年齢によって変わります。
二次相続では配偶者居住権が課税対象にならない
配偶者居住権の大きな特徴は、配偶者が亡くなると権利そのものが消滅し、二次相続の相続税の課税対象にならないとされている点です。
| 自宅の分け方 | 一次相続(夫→妻・子) | 二次相続(妻→子) |
|---|---|---|
| 配偶者が所有権をすべて相続 | 配偶者の税額軽減で負担を抑えやすい | 自宅全体が課税対象となり負担が重くなりやすい |
| 配偶者居住権+子が負担付き所有権 | 居住権と所有権に分けてそれぞれ課税 | 居住権は消滅し、課税対象にならない |
一次相続では配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)が使えるため税負担を抑えやすい一方、何も対策をしないと二次相続で負担が集中しがちです。二次相続の考え方は相続税の配偶者控除と二次相続の注意点で詳しく解説しています。
小規模宅地等の特例との併用
敷地利用権(配偶者側)と敷地所有権(子側)は、要件を満たせばいずれも小規模宅地等の特例(居住用は330平米まで評価額80%減額)の対象になり得るとされています。配偶者は取得するだけで適用でき、所有権を取得するお子様は同居などの要件を満たす場合に適用できます。要件の確認は小規模宅地等の特例の要件チェックリストをご覧ください。
利用する前に知っておきたい3つの注意点
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居住権は譲渡・売却ができない 配偶者居住権そのものを売って資金化することはできません。将来、介護施設への入所などで自宅を手放したくなったとき、合意解除や放棄には所有者側に贈与税がかかる場合があるとされています。ライフプランの変化まで織り込んで検討することが大切です。
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登記と建物の条件を確認する 権利を守るには自宅建物への登記が欠かせません。また、亡くなった方が配偶者以外の方と建物を共有していた場合には設定できないなど、前提条件があります。
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税額だけで決めない 固定資産税や通常の修繕費は実質的に配偶者が負担するとされているほか、評価の計算やご家族の関係性によっては、あえて使わないほうがよいケースもあります。一次・二次相続をトータルで試算し、遺言や生前贈与など他の対策と比べて選ぶことをおすすめします。生前対策の全体像は生前対策は何から始める?60代からの相続準備チェックリストにまとめています。
横山千夏税理士事務所のサポート
当事務所は、奈良の相続税申告と生前対策(遺言書作成サポート)を専門にしています。配偶者居住権については、一次・二次相続を通した相続税のシミュレーション、小規模宅地等の特例との併用判断、遺言で居住権を遺贈する場合の設計まで、女性税理士と女性スタッフが丁寧にサポートいたします。
ご相談はZoomなどを使ったオンライン相談を主体としており、遠方にお住まいのお子様にもそれぞれの場所から同席していただけます。来所をご希望の場合も、近鉄奈良駅から徒歩圏の事務所でお待ちしております。初回面談(60分)は11,000円(税込)で承っております。
よくある質問(FAQ)
Q. 内縁の妻(夫)でも配偶者居住権は使えますか?
A. 対象は法律上の婚姻関係にある配偶者とされています。内縁関係のパートナーは対象外のため、遺言や生前の備えで住まいを確保する方法をご検討ください。
Q. いつまでに決める必要がありますか?
A. 遺産分割協議や遺言で設定します。相続税の申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内のため、評価や特例の判断も含めて早めの着手をおすすめします。
Q. 居住権のある自宅を賃貸に出すことはできますか?
A. 所有者の承諾を得れば、第三者に使用させて収益を得ることもできるとされています。無断で賃貸に出すことはできません。
Q. 途中で配偶者居住権をやめることはできますか?
A. 所有者との合意解除や放棄は可能ですが、その際に所有者へ贈与税が課される場合があるとされています。解消の仕方は事前に税理士へご相談ください。
まとめ|「住み続ける安心」と「二次相続の備え」を両立するために
配偶者居住権は、自宅に住み続ける安心と生活資金の確保、そして二次相続の税負担軽減を両立し得る制度です。一方で、評価の計算や特例との併用判断、解消時の課税など専門的な論点が多く、ご家庭ごとに向き不向きがあります。税制改正により取り扱いが変更される可能性もありますので、実際のご判断にあたっては最新の情報をご確認ください。
「うちの場合は使ったほうがよいのか知りたい」という方は、オンライン相談またはお問い合わせフォームから、横山千夏税理士事務所までお気軽にご相談ください。

