
相続放棄しても支払うものがある?固定資産税・保存義務の落とし穴
相続放棄しても支払うものがある?固定資産税・保存義務の落とし穴
「相続放棄をすれば、亡くなった親の財産も借金もすべて関係なくなる」と理解されている方が多くいらっしゃいます。基本的にはその通りなのですが、実際には相続放棄後も負担や責任が残るケースがあり、ご相談に来られた段階で初めてそれを知って驚かれる方も少なくありません。
特に2023年4月に民法第940条が改正されて以降、相続放棄後の管理責任のルールが大きく変わりました。「自分には関係ない」と思っていた財産について、ある日突然対応を迫られるケースが、奈良県内でも実際に発生しています。
私たち横山千夏税理士事務所では、奈良の方の相続放棄に関するご相談を承っております。本記事では、2026年現在の制度に沿って、相続放棄をしても残る可能性のある負担と、その回避方法をご説明いたします。
結論:相続放棄で原則「免れるもの」と「残るもの」|2026年現在
最初に結論をお伝えします。相続放棄をすると、原則として被相続人の借金や税金の支払い義務からは解放されます。ただし、一定の条件下で「保存義務」が残ることがあり、また葬儀費用や立替金の取り扱いなど注意点もございます。
免れるもの:被相続人の借金・固定資産税の納税義務
相続放棄が家庭裁判所で受理されると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。これにより、被相続人の借金、滞納していた税金、固定資産税の納税義務などからは原則として解放されます。
不動産を相続放棄すれば、その後の固定資産税の納税通知書が継続して届くことはありません。
残る可能性があるもの:保存義務・葬儀費用の取り扱い
ただし、放棄時に財産を「現に占有」している場合は保存義務が残ります(後述)。また、葬儀費用や入院費用などを相続放棄前に立て替えている場合、その扱いには注意が必要です。
被相続人の財産から葬儀費用を支払ってしまうと、「単純承認」とみなされて相続放棄ができなくなる可能性があります。社会通念上相当な範囲であれば認められるケースもありますが、判断が難しいため、葬儀費用の支払い前に専門家へご相談いただくことをおすすめいたします。
民法940条改正で変わった「保存義務」(令和5年4月施行)
ここが2026年現在の最も重要なポイントです。相続放棄後の管理責任について、2023年4月1日施行の民法改正で大きなルール変更がありました。
改正前:管理義務が広く課されていた
改正前の民法第940条では、相続放棄をした者は「次の相続人が管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって管理を継続しなければならない」と定められていました。
この規定では、遠方に住んでいて実家の管理に一切関与していなかった人にも管理責任が及ぶ可能性があり、相続放棄をしても責任から完全に解放されないという問題がありました。
改正後:「現に占有」している場合のみ保存義務
改正後の民法第940条では、保存義務を負うのは「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限定されました。「管理義務」から「保存義務」へと表現も変わり、財産を滅失・損傷させない範囲の最小限の責任に整理されています。
「現に占有」とは、その財産を事実上支配・管理している状態を指します。
「現に占有」の判定例
具体的にどのようなケースが「現に占有」に該当するのか、いくつか例を挙げてご説明いたします。
- 同居している長男が放棄した場合:実家を現に占有しているため、保存義務が残ります
- 遠方在住の長男が放棄した場合:実家を占有していないため、保存義務は生じません
- 空き家の鍵を預かっていた場合:状況によっては「現に占有」と判断される可能性があります
- 被相続人の老人ホーム入所中に時々様子を見に行っていた程度:個別判断となります
保存義務から免れるための相続財産清算人選任申立て
「現に占有」していて保存義務を負うことになった場合でも、相続財産清算人を選任して財産を引き渡せば、その時点で保存義務から解放されます。
相続財産清算人の選任は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てが必要で、予納金として数十万円から100万円程度の支払いが求められるのが一般的です。費用負担はありますが、長期にわたる管理責任から解放される手段の一つです。
固定資産税の納税通知書が届いたら|よくある誤解
相続放棄後、翌年の固定資産税納税通知書が亡くなった方の名義で届くケースがあります。これに驚かれてご相談に来られる方も少なくありません。
1月1日時点の登記名義人に通知が届く仕組み
固定資産税は地方税法上、1月1日時点の登記名義人に課税される仕組みです。お亡くなりになった方が1月1日時点でまだ登記名義人だった場合、相続放棄をした後でも、その年度の納税通知書が住所地に届く可能性があります。
相続放棄受理後でも市町村に通知書が届くケース
相続放棄が家庭裁判所で受理されても、その情報が自動的に市町村に伝わるわけではありません。市町村の課税担当部署に相続放棄申述受理証明書を提出して、自分が相続放棄したことを伝える必要があります。
これを怠ると、何年も納税通知書が届き続けることがあります。「相続放棄したから無視していい」と判断する前に、市町村に申し出ることが大切です。
相続放棄を検討中の方は早めにご相談を
相続放棄には、「相続を知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申述するという厳格な期限があります(民法第915条)。期限を過ぎると単純承認とみなされ、借金も含めてすべて相続することになってしまいます。
横山千夏税理士事務所では、奈良県全域から相続放棄に関するご相談を承っております。相続放棄が最善の選択肢なのか、放棄後に保存義務が残る可能性はあるか、固定資産税の通知への対応はどうするか、といった具体的な疑問にお答えいたします。
近鉄奈良駅すぐの事務所での直接面談はもちろん、Zoom等を利用したオンライン相談で全国からご相談いただけます。女性スタッフが中心となり、デリケートなご家庭の事情にも安心してお話しいただける環境を整えております。
3ヶ月の期限が迫っている方、放棄後の責任が不安な方は、お一人で抱え込まず、初回のご相談(15分間無料対応あり)から、まずは当事務所にご相談ください。
なお、相続放棄の手続きそのものは弁護士・司法書士の業務範囲となる場面もございます。案件の内容によっては弁護士等との連携が必要となる場合もありますので、当事務所からも適切にご案内いたします。法令は改正により内容が変更される可能性がありますので、実際の手続きにあたっては最新情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。


