相続財産清算人とは?相続放棄した後の家と固定資産税はどうなる【2026年】
相続財産清算人とは?相続放棄した後の家と固定資産税はどうなる【2026年】
「相続放棄をしたのに、実家の固定資産税の納税通知書が届いた」「全員が放棄したあと、空き家になった実家は誰が管理するのか」——相続放棄にまつわるこうしたご相談が、奈良県内でも増えています。奈良市や生駒市の市街地だけでなく、吉野郡など山間部の空き家や山林では、相続人全員が放棄を選ぶケースが珍しくありません。
相続放棄をすれば債務や固定資産税の負担から原則として離れられますが、「放棄すればすべて終わり」ではない場面があります。その出口となる制度が、家庭裁判所が選任する相続財産清算人です。この記事では、2026年現在の相続財産清算人の仕組み、申立ての流れと費用、相続放棄後の固定資産税や管理責任の考え方を、奈良の税理士の視点から解説します。
相続放棄をしても残る2つの問題
問題1:固定資産税の納税通知書が届き続ける
固定資産税は、毎年1月1日時点の状況をもとに課税される仕組みです。相続放棄が受理されていれば、放棄した方は初めから相続人でなかったことになり、被相続人の納税義務を引き継ぐことはないとされています。ただ、登記や自治体の台帳が被相続人のままになっていると、自治体が相続人と見込んだ方へ納税通知書を送ってくることがあり、「放棄したのに請求が来た」という混乱が起こりがちです。
放棄後に届いた通知への対応や、放棄しても支払いが残りやすい費目の詳細は、相続放棄しても支払うものがある?固定資産税・保存義務の落とし穴で解説しています。
問題2:「現に占有」している財産の保存義務
2023年4月施行の改正民法では、相続放棄をした人の管理責任が整理されました。放棄の時点でその財産を現に占有している人だけが、自分の財産と同じ程度の注意をもって保存する義務を負い、次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまでその義務が続くとされています。
つまり、被相続人と同居していた方や実家の鍵を管理していた方は、放棄をしても「引き渡す相手」が現れるまで家を放置できない立場に置かれます。相続人全員が放棄した場合、この引き渡し先を作る手続きが相続財産清算人の選任申立てです。
相続財産清算人とは?制度の基本
相続財産清算人とは、相続人がいない(相続人全員が放棄した場合を含む)相続財産について、家庭裁判所に選任され、財産の清算を行う人です。実務では弁護士や司法書士が選ばれることが多いとされています。従来は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、2023年4月の民法改正で清算までを担う相続財産清算人に名称が改められ、公告手続の一本化により、権利関係の確定までの期間は最短で6か月程度に短縮されたとされています。
清算人は、おおむね次の流れで財産を処理します。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 選任の申立て | 利害関係人などが家庭裁判所に申し立てる | 準備に1〜2か月程度 |
| 2. 選任・公告 | 清算人選任と相続人捜索の公告が行われる | 6か月以上 |
| 3. 債権者への弁済 | 財産を換価し、債権者・受遺者に支払う | 事案による |
| 4. 特別縁故者への分与 | 内縁の方や療養看護に努めた方への分与を判断 | 事案による |
| 5. 国庫帰属 | 残った財産は国庫に引き継がれる | 全体で1年以上かかる例も |
申立てができる人と申立先
申立てができるのは、被相続人の債権者、遺贈を受けた方、特別縁故者などの利害関係人と検察官です。相続放棄をして保存義務を負っている元相続人も、引き渡し先を作る必要がある立場として、利害関係人に当たると考えられています。申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
費用と予納金——ここが最大のハードル
申立てには、収入印紙や官報公告料のほかに、予納金を求められる場合があります。予納金は清算人の報酬や管理費用に充てられるお金で、金額は財産の内容によって異なりますが、数十万円から100万円程度を求められる例もあると解説されています。相続財産に預貯金や売却しやすい不動産があれば、そこから清算費用が賄われ、予納金が戻ってくる場合もあります。金額は事案ごとに家庭裁判所が判断するため、申立前に管轄の裁判所へ確認することをおすすめします。
申し立てるべきか、様子を見るべきか——税理士の視点
予納金の負担があるため、「全員が放棄したら自動的に清算人を立てるべき」とまでは言えません。判断の目安は次のとおりです。
- 実家を現に占有しており、老朽化による近隣への損害や特定空家の指定が心配される場合は、保存義務から離れるために申立てを検討する価値があります
- 誰も占有しておらず、債権者も動いていない場合は、費用を負担してまで急いで申し立てる必要性が低いこともあります
- そもそも放棄すべきかどうかの段階であれば、財産の全体像を把握してから判断することが大切です。迷ったときの考え方は相続放棄するか迷ったら最初に読む記事をご覧ください
また、放棄を選ぶ前に「空き家を相続して売却し、譲渡所得の特例を使う」という選択肢と比べておくことも重要です。相続した空き家の売却と税金については奈良で空き家を相続したらまずやることで解説しています。どちらが有利かは、不動産の価値・債務の額・管理の負担によって変わるため、放棄の期限である相続を知ってから3か月を迎える前に、全体を見渡すことが欠かせません。
なお、清算人の選任申立てそのものは法律手続きのため、弁護士・司法書士との連携が必要になる場面があります。当事務所では税務面の検討とあわせて、信頼できる専門家をご案内しています。
横山千夏税理士事務所のサポート
私たち横山千夏税理士事務所は、近鉄奈良駅から徒歩すぐの場所に事務所を構え、奈良県全域の相続のご相談を承っています。相続放棄が関わる案件では、次のような形でお手伝いしています。
- 放棄する場合としない場合の税負担・費用負担の比較検討
- 相続放棄後の固定資産税・保存義務に関する税務面の整理
- 空き家の売却を選ぶ場合の譲渡所得税の試算と申告
- 弁護士・司法書士など清算手続きの専門家との連携
女性税理士が中心となり、デリケートなご事情も話しやすい環境でお聞きしています。ご来所のほか、Zoomなどを使ったオンライン相談にも対応しており、遠方にお住まいのご相続人も、それぞれの場所から同時にご参加いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続放棄をすれば、固定資産税は一切払わなくてよいのですか?
A. 放棄が受理されれば、被相続人の納税義務を引き継ぐことはないとされています。ただし、台帳上の名義の関係で納税通知書が届くことがあり、対応を誤ると不利益につながる場合もあるため、通知が届いたら放置せず市町村や専門家にご相談ください。
Q. 相続財産清算人の予納金はいくらくらいですか?
A. 財産の内容によって異なり、数十万円から100万円程度となる例もあると解説されています。財産から清算費用が賄えた場合は返還されることもあります。正確な金額は申立先の家庭裁判所にご確認ください。
Q. 全員が放棄したあと、空き家を放置するとどうなりますか?
A. 放棄時に現に占有していた方には保存義務が残るとされており、倒壊などで近隣に損害が出た場合の責任が問題になり得ます。また、自治体から特定空家に指定されると行政指導の対象になります。占有している方がいる場合は、清算人選任による引き渡しを検討しましょう。
Q. 税理士に相談するのはどの段階がよいですか?
A. 相続放棄には「相続を知ってから3か月」という期限があるため、放棄するかどうかを迷っている段階が最適です。財産・債務の全体像と税負担を整理したうえで、放棄・承継・売却のどれが合理的かを一緒に検討できます。
まとめ|放棄の「その後」まで見通してから決める
相続放棄は有効な選択肢ですが、固定資産税の通知や保存義務、相続財産清算人の予納金など、「その後」に残る論点があります。制度の運用は改正により変更される可能性がありますので、最新の取り扱いは家庭裁判所や市町村、専門家にご確認ください。
横山千夏税理士事務所では、相続放棄と売却・承継の比較から申告までを、女性スタッフが丁寧にサポートいたします。近鉄奈良駅からすぐの事務所へのご来所のほか、オンライン相談やお問い合わせフォームもご利用いただけます。お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。


